平成17年(2005年)9月、日本の自然界で一度は姿を消したコウノトリが、40年にも及ぶ人工飼育を経て、再び豊岡の空にはばたきました。
一度消滅した野生動物を飼育下で繁殖させ、かつての生息地である人里に帰していくことは、世界にも例のない壮大なプロジェクトです。
膨大な時間とエネルギーとコストをかけて、それでも豊岡がコウノトリの野生復帰の取組みを続けてきたのはなぜでしょうか。豊岡は何を目指しているのでしょうか。
コウノトリとの”約束”を果たす
私たちは、絶滅の危機に瀕していたコウノトリを救う最後の手段として、野生のコウノトリを捕獲して人工飼育する道を選びました。コウノトリを檻の中に閉じ込めたとき、「いつか、きっと空に帰す」と約束しました。
約束は果たされなければなりません。
コウノトリの捕獲
種の保存に関し、国際的な貢献を行う
コウノトリ(Oriental white stork)の数は、世界でわずか2,500羽~4,000羽にまで減っているといわれています。
コウノトリが安心して生息できる環境を保存、再生、創造していくことにより、日本最後のコウノトリの生息地として果たすべき国際的役割を担っていきます。
平成19年 コウノトリの自然界での巣立ち(国内では46年ぶり)
コウノトリも住める、豊かな環境をつくる
コウノトリは里の自然生態系の頂点に立つ肉食の鳥です。コウノトリが野生で生息するためには、里山や田んぼ、川や水路に多様で膨大な生きもの(エサ)がいる「自然環境」が必要です。
また、私たちの心と体に深く染み込んだ生活様式と価値観が、環境を破壊しコウノトリを絶滅に追い込んでいきました。コウノトリを暮らしの中に受け入れていく「文化環境」を再生することも必要です。
コウノトリも住める豊かな環境(自然と文化)は、人間にとっても持続可能で健康的に暮らせる環境であるに違いありません。
コウノトリのとなりで農作業
このブログの開設前、1月16日の豊岡の様子です。
気温が氷点下になった、とても寒い朝でした。
朝もやを避けるように日が差し込む中、円山川に架かる堀川橋の南側(豊岡市小田井町付近)に15羽のコウノトリが飛来し、羽を休めていました。
このコウノトリは、時折、餌をついばむようなしぐさやクラッタリング(※)をしながら、通勤・通学する私たちを横目に、朝の優雅なひとときを過ごしていました。
写真では、15羽のコウノトリがいますが、一時は、17羽飛来していたといわれています。
※ クチバシをカタカタと打ち鳴らしてコミュニケーションをとる行動
2月28日、豊岡市城崎町戸島の「ハチゴロウの戸島湿地」内の巣塔に卵(1つ)が産まれていることが分かりました。
コウノトリ湿地ネット(コウノトリが餌を採る湿地をつくったり、コウノトリの観察をしている団体)のメンバーが、ハチゴロウの戸島湿地の南東の山に登って確認されました。
産卵したペアは、J391(平成16年生まれのオス、平成19年放鳥)とJ294(平成13年生まれのメス、平成17年放鳥)です。
このペアは昨年も同じ場所で産卵、子育てし、3羽のヒナを巣立ちさせました。
これから、2つめ、3つめ、、、の卵が産まれ、それらが順調に孵化・生育することを期待しています。(写真提供:兵庫県立コウノトリの郷公園)
4月3日午前8時18分、豊岡市城崎町戸島の「豊岡市立ハチゴロウの戸島湿地」にある巣塔で3羽のヒナが孵化していることが分かりました。さらに4月6日にはもう1羽、計4羽のヒナが孵化し、元気でいることが観察されています。
この巣塔では2月28日に1つ、3月10日にさらに3つ、計4個の産卵が確認され、オス・メスが交代で温めていました。
このペアは昨年も同じ場所で産卵、子育てし、3羽のヒナを巣立ちさせました。今年もがんばってエサを運び、子育てをすることが期待されます。
6月上旬ごろに予想される巣立ちまで、子育ての様子をハチゴロウの戸島湿地管理棟などから観察することができます。
城崎温泉駅徒歩15分のこの湿地にぜひお越しください。(休園日は火曜日です。) (写真提供:兵庫県立コウノトリの郷公園)
4月28日、豊岡市野上の電柱の上に設けられた巣塔で3羽のヒナが孵化していることが分かりました。
ヒナの両親はJ362(平成15年生まれのメス・平成17年にコウノトリの郷公園から放鳥)とJ001(平成18年生まれのオス・平成18年に祥雲寺拠点から放鳥)です。
このペアは電柱に巣を作ったので安全のために巣を撤去されていましたが、撤去してもすぐに巣を作っていました。
電柱につくられた巣
そこで、関西電力さんが電柱の上部に巣台を取り付けたところ、そこで産卵し、4月23日には親鳥が餌を吐き出す様子が観察されていました。
電柱の上に設置された巣台
このペアは昨年もすぐ近くにあるコウノトリ保護増殖センターのケージの上で子育てし、1羽のヒナを巣立ちさせています。
近くには巣塔があるので、そっちを使ってくれたらいいのですが、、、。
けど、まずは無事に巣立つことを願っています。
ハチゴロウの戸島湿地管理棟の望遠鏡で見たコウノトリの子育ての様子です。この湿地では、湿地内の巣塔で子育てをしているコウノトリの様子を、ゆっくり・じっくりと観察することができます。
すっかり大きくなった2羽のヒナとヒナを見守る親鳥。この様子が見られるのは巣立ち(6月上旬の見込み)までです。
ハチゴロウの戸島湿地の南側上空から撮影した写真です。
写真中央に水を湛えている四角い部分がハチゴロウの戸島湿地。その上(北)側に管理棟があります。
写真左下から中央上に流れるのは円山川。その左側は城崎温泉街。城崎温泉街から湿地まで徒歩15分くらいです。
城崎温泉に泊まって、コウノトリの子育てと、ゆったりと流れる円山川・新緑の山々・田植えが終わって水を湛える田んぼをゆっくりご覧ください。
豊岡市立ハチゴロウの戸島湿地(写真は管理棟)
兵庫県豊岡市城崎町今津1362番地 ℡0796-20-8560
開場時間:9:00~17:00
休場日:火曜日(休日と重なった場合は翌日)及び年末年始
入場料・望遠鏡使用料 無料(ワンコインの環境協力金にご協力ください)
▲田んぼの中を歩くJ0009
昨日(6/4)、昨年7月2日に豊岡市城崎町戸島の巣塔から巣立ったコウノトリ(個体番号:J0009)がおよそ9ヶ月ぶりに豊岡で目撃されました。豊岡市福田や新堂の田んぼでエサを採ったり、羽繕いをしている様子が観察されています。
▲田んぼでエサ採り
このコウノトリは昨年の巣立ち後、奈良県安堵町や兵庫県三田市で目撃され、昨年9月9日には豊岡市出石町三木にいることが確認されました。その後、愛媛県今治市、西予市を経て兵庫県上郡町に行き、上郡町では住民票を発行されました。
コウノトリの観察をしている方が探されましたが、本日は見つからないようです。昨年9月に目撃されたのは1日だけ。もしかすると、またどこかに行ってしまったのかもしれませんね。(写真提供:兵庫県立コウノトリの郷公園)
▲カエルを捕まえたJ0296
7月5日(日)11時前後のJ0296(平成13年生まれのメス、平成17年放鳥)の様子です。
豊岡市出石町宮内、水上あたりの田んぼでエサを採る様子が目撃されています。
J0296はJ0381(平成16年生まれのオス、平成18年放鳥)とともに出石町伊豆の巣塔で3羽のヒナを育てています。
飼育下のコウノトリは1日に約500g(ドジョウに換算すると約80匹)のエサを食べますが、ヒナのときはエサの量がその2倍(約1㎏!)になります。
毎日約1kgのエサを待っているヒナが3羽。親鳥たちはたいへんです。
▲ひぼこホールの近くで
▲出石のカントリーエレベーター(お米の乾燥・調製施設)の近くで
▲巣立ちの様子
8月8日(土)午前6時56分、豊岡市出石町伊豆の巣塔の3羽目のヒナが巣立ちました。
この巣塔では5月12日と18日に3羽のヒナが孵化し、そのうち2羽は7月16・17日に順調に巣立ちました。
しかし、この1羽は途中で風切り羽が抜けてしまい、飛び立つことができませんでした。
この原因は、「12日に生まれて先に大きくなったヒナがエサを独占してしまい、18日に生まれたこのヒナはエサを食べられなかったのでは」、「病気なのでは」という話もあり、とても心配していましたが、これで一安心です。
▲先に巣立った2羽と一緒にエサ探し(右が8日に巣立ったヒナ)
これで今年の巣立ちは終わりです。今年は9羽が巣立ちました。
11月21日午後1時過ぎに愛知県江南市曽本町で2羽のコウノトリが目撃されました。
足環等によって確認したところ、1羽は10月31日に豊岡市但東町唐川で放鳥した4歳のオスでした。
そして、もう1羽は8月8日に豊岡市出石町伊豆の人工巣塔から巣立ちした0歳のオス。風切り羽が抜けてうまく飛べなくなって保護され、11月10日に空に放した個体でした。
▲兵庫県立コウノトリの郷公園の飼育員から空に放たれたJ018
▲きちんと飛べるようになりました。
この2羽は11月20日午前7時30分過ぎに京都府京丹後市にいたことが分かっています。
遠くまで飛んで行けるくらい元気になって、よかったです。(写真提供:兵庫県立コウノトリの郷公園)
12月25日と29日に相次いでコウノトリ死亡の連絡がありました。
25日に石川県で発見されたのはJ018。今年8月に豊岡市出石町伊豆で巣立ったものの、一時保護され、11月10日に空に放たれた個体です。11月中旬から、京都府、福井県、愛知県、長野県、富山県、石川県あたりにいたことが分かっています。
一方、29日に三重県で発見されたのはJ398。今年10月に豊岡市但東町唐川から放鳥した個体です。こちらは11月中旬から神戸市、和歌山県、三重県にいたことが分かっています。
コウノトリにとって、生きものの冬眠などによりエサが減少する冬は過酷な季節です。
この2羽の死亡によって野外で暮らすコウノトリは36羽になりました。無事に冬を越せますように。
六方たんぼのコウノトリのペアです。仲良く羽を休めてます^^
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