美方郡産但馬牛の取り組みを後世へ 農業遺産認定に向けて協議会設立
兵庫県美方郡香美町、同郡新温泉町やJAたじまらは、美方郡産但馬牛の世界と日本の農業遺産への認定に向け、「美方郡産但馬牛」世界・日本農業遺産推進協議会を立ち上げました。兵庫県美方郡で明治時代から行われる但馬牛の厳正な個体管理と、育種改良による資質と品位に優れた子牛生産への取り組みを後世へ残し、但馬牛のさらなる振興を目指します。
2月14日に香美町役場(美方郡香美町香住区香住)で開いた設立総会には、両町、JAなどの関係者約20人が出席。
香美町の浜上勇人町長が同協議会の会長に就き、「全国和牛の原々種である但馬牛の認定へ、関係機関が一丸となって取り組みたい」と認定に向けた決意を語りました。
世界農業遺産は、伝統的な農林水産業の価値を評価し、維持・保全を促すことを目的に、国連食糧農業機関(FAO)が平成22年に創設。社会や環境に適応しながら何世代にもわたり形作られてきた伝統的な農林水産業やそれらに関わる文化、地域的なまとまりなどを認定していて、30年1月現在、17カ国44の地域が認定されています。日本農業遺産は世界農業遺産の日本版。伝統的な農林水産業を営む地域を、世界農業遺産の認定基準に準拠しつつ日本独自の基準で農林水産大臣が認定します。「大崎耕土の巧みな水管理による水田農業システム」の宮崎県大崎地域や、「静岡水わさびの伝統栽培」の静岡県わさび栽培地域など、29年3月現在で8の地域が認定されています。
但馬牛の歴史は古く、美方郡では矢田川や岸田川などの水系ごとに閉鎖的な繁殖が繰り返されていて、江戸時代後期には「蔓牛」と呼ばれる牛群を形成。各町村では明治30年(1897年)ごろから、血統情報の基本となる「牛籍簿」が整備され、明治36年(1903年)には国内で初めて「牛籍台帳」の整備が完了しました。これにより、一頭一頭の正確な個体確認が可能となり、牛籍台帳を基に血統、体型や繁殖能力の優秀な個体を「基礎雌牛」として選抜してきたことが但馬牛の系統の礎となりました。
国内の黒毛和牛の99.9%が「あつた蔓」の基礎種雄牛「田尻」号の血統を引くとも言われ、全国の産地から美方郡産但馬牛は育種改良の基礎種牛として求められてきました。この伝統的な取り組みを農業遺産として申請し、今年8月の一次審査、9~11月の現地調査と、来年1月の二次審査を経て、認定の可否は2月ごろの見通しです。認定されれば、畜産に関連した地域は日本初となります。
同JA畜産課の村尾忠司課長は、「美方郡の生産者が今日まで連綿と但馬牛の血統を護り続けてきた改良システムの意義が認定されれば、生産者の大きな励みと自信になると思う」と話していました。