「但馬牛システム」日本農業遺産認定 世界農業遺産認定に向け記念式典で意思統一
「美方郡産但馬牛」世界・日本農業遺産推進協議会は3月4日、「兵庫美方地域の但馬牛システム」が、農林水産省の定める「日本農業遺産」に認定されたことを受け、記念式典をJAたじまのみかた畜産事業所で開きました。同協議会員など関係者ら約30人が、日本農業遺産への認定を祝うとともに、申請に係る課題や認定の意義、今後の展望などを再確認し、次の段階である国連食糧農業機関(FAO)が定める「世界農業遺産」への認定に向けて意思を統一しました。
兵庫県美方郡では、明治30年頃から郡内の各町村で血統情報の基本となる「牛籍簿」が整備され、明治36年には国内で初めて「牛籍台帳」の整備が完了しました。これにより、飼育牛一頭一頭の血統や子牛生産情報が把握できるようになり、郡内の血統や血縁にこだわった和牛の改良を可能にしました。また、放牧の奨励や野草・あぜ草を飼料に利用することで減農薬にも配慮し、農村環境や多種多様な生物資源を守り、牛と人と自然が共生する農業システムを構築してきました。
同協議会は、美方郡の伝統的な農業システムを後世に残し、但馬牛のさらなる振興と地域の活性化を目的に、昨年2月に同郡香美町や新温泉町、JAたじまなど全23団体で設立。書類審査や現地調査など経て、今年の2月に日本農業遺産の認定と世界農業遺産への申請が承認されました。日本農業遺産の認定は県内初で、畜産部門での認定は国内でも初めてです。
式典では、みかた畜産事業所に認定を祝う懸垂幕を掲げ、関係者ら一同で喜びを分かち合いました。香美町長でもある同協議会の浜上勇人会長が、「今回の認定は但馬牛に携わる全ての関係者にとって意義があり、大変喜ばしいこと。認定が追い風となり他産業や地域の活性化にもつながることを大いに期待する」とあいさつ。尾﨑市朗副会長が、「但馬牛の付加価値がさらに高まったことは間違いない。販売面で有利に働くよう、関係機関が一丸となり但馬牛の振興に一層励んでいく」と話しました。生産者からは、美方郡和牛育種組合の村尾高司組合長が、「認定の知らせを聞いた時はとてもうれしく、但馬牛生産者として誇らしく感じた。美方郡がこだわってきた改良方針に後ろ盾を得た思いだ。今後の若い人たちが畜産業に興味を持ってもらえるきっかけにもなれば」と喜びを語りました。
同協議会は今後、世界農業遺産への認定に向けた申請の準備を行い、今年の秋に国連食糧農業機関(FAO)に申請書を提出します。結果は来年秋に決まる予定です。