兵庫美方地域の但馬牛システム 国内で畜産部門初の世界農業遺産へ 国連機関がJA施設など9カ所調査

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 「兵庫美方地域の但馬牛システム」の世界農業遺産認定を目指す兵庫県や香美町、新温泉町、JAたじまなどは6月24日、国連食糧農業機関(FAO)の調査を受けました。現在、世界農業遺産は国内で13地域が認定されており、但馬牛システムが認定されると、国内では畜産部門で初めてとなります。7月中に認定の可否が決まる見通しです。

 但馬牛システムとは、但馬牛の希少な遺伝子を後世につなぐとともに、牛と人が共生し、地域の暮らしや自然環境、伝統、文化などの保全を担ってきた農業体系のことです。

 香美町と新温泉町からなる兵庫県美方地域は、全国の黒毛和牛のルーツとされる但馬牛の育種改良を先進的に取り組んできました。1898年には日本で初めて、牛の血統情報を管理し登録する「牛籍簿(牛籍台帳)」を整備。厳正な個体管理や、美方郡内産にこだわった改良を続け、独自の遺伝資源が保全されています。このほか放牧を推進し、飼料に稲わらやあぜ草、野草を利用することで、同地域の生態系の保全や景観の維持を担っています。

 この日、FAO調査員の李先德さんはJAたじまみかた畜産事業所や但馬牛農家など9カ所を訪問。関係者や畜産農家に、但馬牛の歴史や飼育方法などを熱心に聞き取りしました。

 訪問先の一つである三原野放牧場(新温泉町切畑)では、㈱但馬中井畜産が放牧している12頭の但馬牛について、同社の中井崇泰取締役が説明しました。但馬牛は自生する芝を飼料とし、近くを流れる小川で水分を補給しており、昔ながらの景観が守られています。説明後には、中井取締役が李FAO調査員に「世界農業遺産に認定されると畜産農家の励みになるので、期待している」と強調。それに対し李FAO調査員は「(世界農業遺産認定に向けて)できるだけサポートしたい」と笑顔で答えていました。

 但馬牛システムは、20192月に日本農業遺産に認定されました。同時に、世界農業遺産への認定申請が承認されたましたが、新型コロナウイルス感染拡大等で現地調査が遅れており、認定から遠ざかっていました。